『物と経験のあいだ——カルロ・スカルパの建築空間から』出版のおしらせ

『物と経験のあいだ——カルロ・スカルパの建築空間から』(木内俊彦著、みすず書房、2024年12月16日刊行予定)という本が出版されます。

建築で「空間」と言われるものは何なのか? それを考えることに何の意味があるのか? 20世紀を代表するイタリアの建築家カルロ・スカルパ(1906-78)の作品を詳しく見ることを通じて、建築にとどまらない「空間」の現代的意味を明らかにすることを試みました。

多くの人が手に取りやすいよう、なるべく無駄をはぶき、カラーページを限定したり(と言ってもスカルパ作品はほぼすべてカラーです)と努力したのですが、定価7,480円(税込)という高価なものになってしまいました。その理由は、スカルパ作品の説明のほかに、建築空間の歴史(西洋と日本)と、空間論の歴史についても述べているからです。

私たちにとって当たり前のような「空間」を見直すためには、歴史をある程度知ることが有効です。むしろ、歴史とセットで捉えなければ、「常識」を疑うことは難しい。見方を変えるとこの本は、スカルパ建築、建築史、建築の空間論史という3冊分の概要を1冊で押さえられるおいしい本、かもしれません。

誰にとっても身近な「空間」の魅力と危険性を、建築の専門でない方にも伝えたいと思っています。ぜひ一度手に取って、眺めていただければ幸いです。

目次(抜粋. 一部説明を追加)

第1章 建築空間とは何か
なぜ建築の空間に着目するのか?
建築空間の定義(仮)—— 西洋建築を例に
空間デザインのテーマ —— 日本建築を例に
空間デザインと権力 —— 人を動かす空間から、人が動きやすくなる空間へ
カルロ・スカルパについて

第2章 建築空間の仕組み
三つの空間図式——放射空間・包囲空間・開口空間(まわり・なか・むこう)
穴と群——空間変移を引き起こす二つの仕組み
カルロ・スカルパの建築作品に見られる空間変移のデザインパターン
空間図式と変移パターンを組み合わせた四極構造

第3章 先行理論との関連
「第三の空間概念」に関連する理論——ギーディオン/シュマルゾー/ヒルデブラント/ギブソン/ヴェルフリン/コーリン・ロウ
[コラム]ル・コルビュジエの作品に見られる空間変移
均質空間に対抗する理論——ルイス・カーン/ノルベルグ=シュルツ/原広司/槇文彦/クリストファー・アレグザンダー/香山壽夫

第4章 カルロ・スカルパ建築の経験
カノーヴァ美術館 石膏像ギャラリー
ヴェネツィア・ビエンナーレ 彫刻庭園

目次+はじめに(PDF 2.4MB)